■わだいさむものがたりP.10

御坊ロータリークラブ和田勇委員会

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第18回オリンピック大会の開催地は、
5月23日から27日までミュンヘンで開催される第55回IOC総会で、
IOC委員の投票により決定されることになっています。
候補地には、東京の他、アメリカのデトロイト、
オーストリアのウィーン、ベルギーのブリュッセルが名のりを上げていました。
戦争に勝ち力を強めたアメリカのデトロイトが
圧倒的な有力候補とされているなかで、
日本にとって中南米諸国の賛同をどれだけ得られるかが、
誘致実現の大きな鍵を握っています。

勇、正子-イラスト 勇はオリンピック招致使節として、
メキシコを皮切りにパナマ、キューバ、ベネズエラ、ペルー、
ブラジル、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、コロンビアの
10ヶ国11都市を、協力を求めてまわることになりました。
「パパ、本気なの?」
勇が中南米へ旅立つ一週間前の夜、
店の運営や子どもたちのことなどに不安を感じた正子が尋ねました。

「当たり前や。
僕は東京でオリンピックが開けるのなら、自分の店のことなどどうなってもええと思っている。
東京でオリンピックができれば、日本は大きく前進できるんや。
戦争で負けてすっかり元気をなくしてしもうた日本やけど、
東京オリンピックが実現すれば、きっと勇気と自信を取り戻すことができるんや。
日本はわたしらの愛する祖国やないか。
日本のために全力を尽くさないかん。
僕はそのことが僕に与えられた使命やと思う。
義務や思う。みんな燃えてるんや。僕もマサも頑張らなあかんやろう」

身を投げうって祖国のために働こうとする勇の情熱に、正子は心を打たれました。
そして自分も一緒に中南米への旅に行くことを決意したのです。