■わだいさむものがたりP.8

御坊ロータリークラブ和田勇委員会

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水泳選手-イラスト勇一家の心づくしのかいあって、大会では日本選手たちが大活躍。
1500メートルで古橋廣之進と橋爪四郎が世界新記録を更新したのを皮切りに、
日本勢は次々と新記録をマークし圧勝したのです。
「夕べはおかいさんを食べて、よく眠れた。
勝てたのはおかいさんのおかげですよ」
大会の後、橋爪はそんなことを言って正子に勝利を報告し、正子を喜ばせたのでした。


第二次世界大戦で負けた日本は、
1948年(昭和23年)のロンドン・オリンピックには出場できず、
苦い思いをしました。
その代わりとして東京で同じ時期に開いた日本水泳選手権では
世界記録も生まれましたが、
日本水泳連盟がFINA(国際水泳連盟)に
加盟していなかったために公認されず、悔し涙を飲みました。

アメリカ人のほとんどは、
戦争に負けて食うや食わずの日本選手に
そんな記録が出せるわけがないと、
はなから信じようとせず、
アメリカの新聞は「日本のプールはアメリカより短いに違いない」
「日本のストップウォッチは壊れている」などと書き立てたのです。
全米水泳選手権での日本勢の圧勝は、
そんな屈辱を一気にはらしてくれることになりました。

これまでは「ジャップ、ジャップ」といって
日本人や日系人を認めなかった白人たちは
「グレート・スイマー(すばらしい水泳選手だ)」
「フライング・フィッシュ・オブ・フジヤマ(富士山の国のトビウオだ)」と、
日本のヒーローたちを口々に褒め称え、
「ジャップ」という日本人を見下した呼び方は、
すぐに「ジャパニーズ」という親しみを込めた呼び名に代わりました。
選手たちの大活躍のおかげで、
アメリカでの日本人や日系人に対する偏見が薄れたことに、
勇も正子もとても喜びました。