-御坊・日高に自信と誇りを-…和田勇物語 東京にオリンピックを呼んだ、ふる里ゆかりの国際人 /文-長岡亜矢子、絵-かりやぞののり子
勇の父、和田・ジョン・善兵衛は 1892年(明治25年)に出稼ぎ漁夫として カナダのバンクーバーに渡り、 玉枝と結婚してからは、 カナダ国境に近い米国ワシントン州べリングハムで夫婦ふたり、 小さな食堂を営んでいました。 しかし家は貧しく、七人兄弟の長男だった勇は 口減らしのため両親と別れて、 和歌山県の祖父母のもとに預けられることになりました。 「妹や弟がたくさんおるんやから、ぼくが我慢しなければ」 勇はまだ四歳でした。 遠く離れたアメリカに住む両親が恋しくて、 ひとり泣いた夜もありました。